猫がタンパク質を必要とするのはなぜなのでしょうか?
猫の食事は、猫にとっては毎日の楽しみであり、飼い主にとって、もっとも大事なお世話です。保存性や利便性から、キャットフードを利用している人が多いでしょう。
猫にとって重要な栄養素の1つはタンパク質であることがわかっています。
あなたが与えているキャットフードには、どれくらいタンパク質が摂れていますか?
猫がタンパク質を必要とする理由
私たち動物は、外部から食べ物を得ることで生きていられます。食事によって得られる栄養素は、
・タンパク質
・脂肪
・炭水化物
・ビタミン
・ミネラル
・水分
この中で、タンパク質、脂肪、炭水化物の3つがエネルギー源として利用されます。
動物は種類によって栄養素の消化と利用も異なるため、必要な栄養素も異なります。
草食動物は、エネルギーを炭水化物から摂れますが、雑食動物や肉食動物は、タンパク質や脂肪をエネルギー源として利用するようにできています。
猫は完全肉食動物
犬は植物からもある程度の栄養を摂取できる雑食型ですが、猫は完全な肉食動物です。
イエネコのDNAは、ネズミや野ウサギ、鳥などを狩って食べていた祖先の時代から変わっていません。
いまでも特定のアミノ酸を体内で合成する能力が限られているため、代謝も肉中心の食餌に適しています。
猫に動物性タンパク質からアミノ酸を得る
肉食である猫のカラダは、アミノ酸を肉のタンパク質から摂るように進化しました。
猫は9つの必須アミノ酸の他にタウリンとアルギニンも必須です。タウリンとアルギニンはどちらも動物の組織を食べることで得られます。
ビタミンAやビタミンD、ナイアシンなど、特定ビタミンは体内で十分に生成できないため、食べ物から摂取する必要があります。
タウリン
タウリンとは、目と心臓、正常な生殖にも必要なアミノ酸です。体内でまったく生成できない訳ではないのですが、必要とする量を満たすことができません。
タウリン欠乏は、およそ4ヶ月不足すると進行性網膜萎縮症や拡張型心筋症、生殖不全、子猫の発育異常、免疫力低下が起こります。
進行性網膜萎縮症に至ってはその後に十分なタウリン摂取を行っても回復せず失明に至る可能性があります。
アルギニン
アルギニンは必須アミノ酸であり、アンモニアの排泄に重要な役割を果たすといわれています。
アンモニアはタンパク質が分解される際に生成され、またその肉類かに含まれるアルギニンでアンモニアを尿素に変えて排出します。
そのため。アルギニンが欠乏すると、血中のアンモニアが高濃度(高アンモニア血症)になり、ヨダレや筋肉のふるえなど神経症状を起こす可能性があり、特に猫の場合は放置すれば死に至る危険があります。
また、軽度の欠乏が長期続くと、目に異常が見られ白内障が進行する傾向があります。
十分なアルギニンの摂取は、腫瘍の進行を遅らせる・がん治療の助けになる、創傷の治癒、免疫力の調整などに役立ちます。
タンパク質は大事なエネルギー源
タンパク質は、猫のエネルギー代謝にもっとも大事な栄養素です。
猫の肝臓の酵素は、エネルギーと血糖値を維持するためにタンパク質を絶えず分解しています。
そのため、もし、猫が十分なタンパク質を摂取できていないと、炭水化物などの他のエネルギー源があったとしても、猫の体はタンパク質とアミノ酸の必要量を満たすために、筋肉組織を分解しはじめてしまいます。
筋肉が壊れると猫の身体は十分な臓器の機能不全や運動困難、十分な体温を作れないことから免疫が低下するなどサルコペニアの危険性が高まります。
キャットフードに含まれるタンパク質
キャットフードに含まれるタンパク質は、動物性タンパク質と植物性タンパク質の 2種類があります。
植物由来のタンパク質を使用しているキャットフードもありますが、特定の栄養素は動物性の組織にだけ存在しているので植物由来の栄養では、猫の身体のニーズを満たすことができません。
・猫の必須アミノ酸であるタウリンは、植物性の食材にはありません。
・メチオニンとシスチンは、特に成長期の猫に大量に必要とされるアミノ酸ですが、植物からは十分な量を得ることができません。また、メチオニン摂取のため、子猫には全体の19%が動物性タンパク質でできた食事が必要です。欠乏すると、成長不良や皮膚炎を起こす可能性があります。
・植物由来のタンパク質よりも動物由来のタンパク質の方が体内でよりよく代謝されます。
動物性タンパク質
キャットフードに含まれる動物性のタンパク質は原材料のラベルに表示されています。チキン、ターキー、牛肉、ラム、魚類などがあります。
肉や魚の中には、さまざまな肉のミールや副産物が含まれている場合もあります。
これらは濃縮されたタンパク質源であることは間違いありません。栄養的には、必ずしもすべてが悪い成分とは限りません。
ミール
「ミール」は、原材料として記載されています。AAFCO(米国飼料検査官協会)によると、ミールとは、粉砕され水分が除かれた動物性タンパク質を指します。
たとえば、家禽ミールは家禽の肉全体から製造された乾燥製品です。羽毛、頭、足、および内臓が含まれていません。ミールは濃縮されたタンパク質源として問題なく扱われます。
肉副産物
キャットフードの「副産物」は避けるべきと言われています。副産物は食べ物として適さないものの処分ではありません。正肉以外には、心臓やレバー、砂肝などの内臓が含まれています。
日本では「ペットフード安全法」に則り、安全や衛生面では厳しく定められています。そのため、適切に処理されたものだけが使用されています。
植物性のタンパク質
キャットフードに使われる穀物にでタンパク質が含まれています。コーングルテンミール、大豆ミール、小麦グルテン、米など。
植物性ですが、栄養成分表では正式にタンパク質として扱われます。
加工技術によって植物性たんぱく質も猫のお腹で消化しやすくなったと言われています。しかし、動物性タンパク質と比較すると、植物性タンパク質の吸収効率は悪いのです。
植物由来の食材
大豆ミールや脱脂加工大豆など植物性の材料は、肉類に匹敵するタンパク質があります。が、猫は動物性タンパク質しか消化利用することができません。
植物性の食材には、タウリンやメチオニンが十分には含まれていません。キャットフードには、添加物として追加しなくてはならなくなるのです。
十分に必要な栄養を得るためには、動物由来のタンパク質を摂取する必要があるのです。
高タンパクのキャットフードって必要?
猫は、犬や人と比べると多くのタンパク質が必要です。
AAFCO(米国飼料検査官協会)は、成猫で最低26%、子猫や妊娠中の猫で最低30%のタンパク質を推奨しています。これらはあくまでも最低ラインです。健康のためにはさらに高い割合でのタンパク質が望まれています。
最近の研究では、40%以上のタンパク質が望ましいとされています。そして、それ以下の食餌を継続すれば、筋肉量が減少する危険性が示唆されています。
低品質なタンパク質は、高品質のタンパク質よりも吸収効率がよくありません。低タンパク質な食事を継続した場合と同じ結果になる危険性があります。

猫も加齢により消化能力が低下してきます。そのため、データ上の必要タンパク質量は増加します。
12 歳以上の健康的な猫では、およそ50%タンパク質を必要しています。一方、シニア向けフードはタンパク質を抑えて作られます。高齢で増加する腎臓病の懸念があるからです。
タンパク質の制限は腎臓病になっている猫にとって有益ですが。しかし、低タンパク質が腎臓病を発症させないという根拠にはならないのが現状です。
もしそうなら、幼少期からタンパク質制限をすれば腎臓病になる猫が減少するからです。そして、そんなことが起きないことは、多くの飼い主が知っています。