見かけた野良猫を保護してあげたいと思っても、安易に「飼う」ことができない人は多いのではないでしょうか。中には、「もともと外にいた猫だから…」と、悩んだ末に外で飼う方法を探そうとする人もいるかもしれません。
猫の外飼いは、日本ではかつて一般的でした。しかし、近年ではそのリスクや周囲への影響から、外飼いは慎重に見直されるべきという声が増えています。
この記事では、猫の外飼いに伴うリスクについて解説します。最初に保護したいと思ったときのことを思い出しながら検討してみてください。
外で猫を飼うのはアリ?ナシ?
いわゆるキレイごとから言えば、現代の日本において、猫の外飼いはおすすめできません。
法的・安全面・衛生面の観点から見ても、室内飼育が基本と考えておくべきでしょう。
理由は3つあります。
・法的問題
・猫の安全面での問題
・公衆衛生問題
法的な問題
野良猫を野良猫のままにしておくことは、遺棄や虐待ではないので刑事罰が科されるような重大なものではありませんが、猫の外飼いは、動物愛護管理法(以下、動愛法)が定めている「適切な飼育環境」を確保することができません。つまり、飼い主として法律を遵守できていないのです。
動愛法では、動物の所有者(飼い主)は適切に飼養・管理する責務があると定められています。これは動物への適切な食事や飲み水の提供、健康管理、そして猫が他人の健康や財産に対して、害にならないための管理も含まれます。
外飼いの場合、手元にいない猫に対して「管理ができる」とは、とてもいえない状況です。夕方になれば帰ってくると思っていても人間のように携帯電話で気軽に連絡がつくものでもなく、どこにいて何をしているのかわからない状態というのは動愛法の定めに反しているといえるのです。
猫の安全面での問題
外で過ごす時間が長くなればなるほど、猫は多くの危険にさらされます。
・交通事故
・ほかの猫とのケンカ
・感染症
・寄生虫への感染
・食べ物による中毒
・他の動物におそわれる
・(未不妊の場合)望まない繁殖
また、メス猫であれば生後5~6カ月から妊娠可能になります。近くに交配可能なメス猫が複数いない場所では、オス猫の一部はメスをひきつけるために子猫を殺してしまうこともあります。すべてのオスがそうするわけではありませんが、これは猫社会の生存競争によるものであっても、いずれにせよ決して安全とはいえません。
公衆衛生の問題
猫を外飼いにすると、公衆衛生の観点から問題を引き起こす可能性があります。外にいる猫はどこで排泄しているかわかりません。自分の所有する敷地内を超えたら、たとえ空き地であってもそこは他人の所有地です。猫が近隣の敷地で排泄を行うことで、他人の生活環境に悪影響を及ぼしてしまいます。
また、猫の糞便はかなりクサイ上に、隣人の庭や畑にしてしまうと損害を与える可能性もあります。たとえば、ガーデニングなど土に猫の糞便が混ざると、食材の安全性が損なわれる懸念があります。
猫の糞便にはトキソプラズマなどの寄生虫や細菌が含まれていることがあり、これらが土壌や水源を汚染すると、他の動物や人間に感染する恐れがあります。特に妊婦さんがトキソプラズマに感染すると、胎盤を通してお腹のあかちゃんにまで感染し、発育不全を起こす危険があるといわれています。
家で飼えないときにできる現実的な対策
そうは言っても、猫好きなら野良猫をみすみす見過ごすのも忍びないと感じるでしょう。家で猫を飼えない場合でも、猫の安全を確保することは可能です。
現実的な選択肢としては、
・里親を募集する
・知人や家族に相談して一時的な預かり先を探す
・保護団体に相談する
・TNRを検討する(どうしても飼い主が見つからない場合)
まず最初に飼い猫でないかは要確認です。
くわしくは↓
誰かに預かってもらう
一時的でも家に置ける場合は、里親さんが決まるまでの間だけお世話するのはアリ。ただ、毛柄や年齢によって里親さんがなかなかみつからない場合もあるため、結局「うちで飼う」状態になるのは否めません。
そのため、一度は知人・友人や親族、あるいは保護猫団体などに預かりができないか聞いてみることもポイント。
その際には、費用負担や訪問してのお世話、預かってもらう期間を決めるなど、自分ができる最大限を提示することは必要です。場所だけお借りしてあとは自分でやりますという気持ちなら、聞いてみる価値があります。
TNRを検討する
「どれだけ探しても里親が見つからない」
「知人や保護団体にも断られた」
「猫アレルギーまで悪化してしまった」──
そんな最悪の状況なら、最低限な猫の命を守るためにTNRを検討してもいいかもしれません。
本来であれば、安全な室内で安心して暮らせる場所を用意するのが理想です。しかし、現実にはどうしても無理だというケースも存在します。それは仕方のないことです。
TNRは、意味では「再遺棄」と受け取られるかもしれません。しかし、繁殖期の争いの軽減だけでも安全に生きられる可能性は高まります。(道路への飛び出し事故は、繁殖期に多い)
ただし、TNRを選ぶ場合でも、猫の世話と健康管理、里親募集はやめずに続けましょう。
さいごに
外飼いは一見、自由で自然な選択のように見えるかもしれません。が、現代社会(特に住宅街)ではあまりにも多くのリスクを伴います。猫の安全や健康、そして地域との共生のためにも、適切な飼育方法を選ぶことが求められます。
「うちでは飼えないから…」と悩んだときこそ、一人で抱え込まず、地域や保護団体など、猫に関して活動している人たちとつながってみてください。
また、里親さんを探すときでも、周囲に「猫を飼いたい人・飼える人がいたら紹介して」と声掛けしておくだけでも、猫の将来は大きく変わるかもしれません。猫たちがより安全に暮らせるよう、私たちにできることを少しずつでも続けていきましょう。