暑い時期には、猫も熱中症になるため、飼い主は十分注意する必要があります。
猫の中には、エアコン(冷房)を嫌がる子が少なくありません。エアコンをかけていると、わざわざ暑いところへ行ってしまう猫ちゃんもいるのでは?
そこで今回は、猫が熱中症になりやすい条件や予防法を紹介します。また、熱中症かなと思ったときの対処法などを解説します。
目次に見出しが出ていますので、気になるところから読んでくださいね。
猫の熱中症について
熱中症とは、高温で湿度が高い環境で身体に影響する障害のことをいいます。
体温が高温になると体内の水分とミネラルのバランスが崩れます。脱水状態です。脱水状態はふらつきや嘔吐、意識喪失などの症状を起こします。重症化すると、多臓器不全で命を落としてしまうこともあります。
ここでは、ネコと熱中症とのかかわりを見てみましょう。
祖先から見た猫の熱中症
イエネコの祖先・リビアヤマネコは、砂漠で暮らしていたといわれています。そのため、現在の猫も暑さには強いといわれるのでしょう。
しかし、北アフリカにあるリビア一帯とは違い、日本の夏は高温多湿です。全身を被毛でおおわれている猫には、日本の夏は決して安全とはいえない環境です。
また、リビアヤマネコの住んでいたsinアフリカ大陸は、砂漠だけでありません。草原の広がるサバンナや灌木地、針葉樹と広葉樹の混合林、熱帯雨林があります。しかし、リビアヤマネコの生息地は、「熱帯雨林以外」でした。
猫は濡れるのを好みませんが、熱帯雨林気候でも雨を避ける場所は多くあります。また、熱帯雨林には、小さなサルやネズミなど捕食できる小動物が多くいます。それにもかかわらず、ヤマネコは高温多雨である地域を避けて生息していました。
その点を踏まえると、リビアヤマネコは食の安定を優先よりも、あえて、高温多湿の環境を避けることを優先したのではないかと推測ができます。
身体特徴から見た猫の熱中症
ふだん私たち人間は、身体中に汗をかき水分を気化させることで、余分な熱を放出しています。
空気中の湿気が多く汗が上手に気化されなかったり、何らかの原因で汗が出ないために体内に熱がこもることで、熱中症になることがあります。
猫も同様に、体内の熱が放出されなければ熱中症に陥ってしまいます。猫は、汗が出る穴(汗腺)は手足の肉球にしかないのです。
そのため、体温調節はあまり得意ではありません。暑いところで長時間過ごすと身体の深部体温があがり、熱中症になってしまいます。
暑さを感じると、猫は積極的に全身を毛づくろいをします。唾液を気化させることで熱を冷まそうとしているのです。
また、猫は犬のように口を開けてハァハァとパンティングをして体内の熱を逃がすことは基本的にありません。もし、口呼吸をしている猫がいたら、かなり危険な状態である可能性があります。
少なくとも「暑さ」は、猫にとってストレスを感じる要因のひとつになのです。
猫の熱中症の症状
猫が熱中症になってしまったときにあらわれる症状は以下のようなものがあります。
・元気喪失
・心拍数や呼吸数の増加
・食欲不振
・とつぜんの嘔吐や下痢
・ふらつき
・ぐったりする
・口呼吸
・意識喪失
・痙攣
・チアノーゼ(血の気が引き、口の中が青くなる)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
軽症の場合
・元気喪失
・心拍数や呼吸数の増加
・食欲不振
これらは熱中症初期にあらわれる症状です。
猫の身体を触ったときに、あきらかに熱いと感じる場合は、すでに熱中症になっている可能性があります。心拍数や呼吸数を確認しましょう。
心拍数の正常値は、どの資料を調べてもバラバラで根拠が取れません。そのためうちの猫で継続したとこと、安静時は15秒で20~30回、1分間で100〜120回程度でした。
呼吸数の正常値は、安静時で1分あたり20〜40回です。「吸って~吐いて〜」で1回ですので、お腹のあたりを見て、数えてみましょう。熱中症になると安静にしていても、呼吸数は増加します。
「元気」「食欲」は猫の健康の一番わかりやすいバロメーターです。動物は体調を崩すと、できるだけ動かず体力を温存しようとします。消化に体力を使わないよう食べることさえ控えます。
もし呼びかけに応じない、起き上がってもすぐ横になるようなら、正常な状態なのかを見極める必要があります。
中程度~重症の場合
・ふらつき
・ぐったりする
・口呼吸
・嘔吐
・意識喪失
・痙攣
・チアノーゼ
熱中症も中程度以上になると、目で見てすぐにおかしいなと言う症状が出てきます。突然嘔吐したり、口を開けて呼吸をしていたら応急処置が必要です。
できるだけ猫から目を離さないようにして、すぐに病院へ行けるように準備しましょう。
「チアノーゼ」とは、血の気が引いて口の中などが青白くなることです。血圧が下がり血中酸素不足によって起こります。こちらもすぐにでも治療を必要とする状態です。
熱中症の後遺症について
熱中症になり脳や臓器に損傷を受けると、救命後も後遺症が残る場合があります。
特に酸欠による損傷は「被害」が大きく、脳や心臓、腎臓に至るまで危険が及びます。
熱中症の発見が遅れ、見た目の症状がないため安心していたところ、数日後になって、腎不全や心不全、あるいは発作の症状を起こす場合もあります。神経系が壊れると、再び熱中症になりやすいと言われます。
多飲多尿や黄疸は飼い主が見てわかります。しかし、不整脈や体内での出血、めまいなどは目で見てわからないため判断するのは困難です。誤った判断をしないよう獣医師の指示をあおぐようにしましょう。
猫が熱中症になりやすい条件
猫が熱中症になりやすい条件としては、
・真夏日(気温30℃以上)
・風通しの悪い場所
・湿度が高い
・直射日光に当たっている
・もともと脱水気味(腎不全などがあると危険)
・太り気味
・鼻ぺちゃな品種
・長毛種
・子猫、または高齢猫
暑さに加えて湿度が高い環境は、家の中であっても、猫が熱中症になりやすい条件となります。
子猫や高齢猫などは体温調節をする力が強くありません。「大丈夫な環境」ではなく「快適な環境」を積極的に用意してあげる必要があります。
そのほか、ケージ飼育をしているなど猫が自らの判断で場所を移動できない環境では、その場が暑くなることで熱中症になってしまう危険があります。
猫の熱中症を予防する方法
猫の熱中症対策を無条件でいえば「エアコンを適切に使い、室温を最適な温度に保つこと」につきます。
しかし、中にはエアコンの使えない事情がある家庭もあると思いますし、エアコン・クーラーを入れても猫がどこか別の部屋に行ってしまうことも。
我が家で言えば、猫たちはみんなエアコン大好きなのですが、35℃を越える猛暑日などはエアコンの設定を30℃ほどにしても温度差からフル稼働してしまい、逆に部屋が寒くなってしまうという問題が起きています。
最近では電気料金の値上げがあったので、エアコンを一日中つけるのも躊躇してしまいますよね。
猫の熱中症対策で、エアコンを使わない場合にできることを考えました。
対角線上の窓をあけて、温度・湿度とともに下げる
北側の窓など、少しでも涼しい空気が入る方角の窓をあけて、風通しを良くしておきましょう。窓は対角線上に開けておくと、風通しが良くなります。
我が家では、購入して10年一度も開けたことのなかったキッチンの北東側の窓をあけてみました。すると、35℃の酷暑日ですらエアコンいらずで過ごすことができています。室温は28℃。エアコンの聞いた部屋から移動すると、すこしだけ暑いなとは思いますが、去年まで2部屋も3部屋もエアコンをつけていたのに比べたら、
ただし、猛暑日などに、南〜西向きの窓をあけても、熱くなった空気しか入ってきません。エアコンをかけずに熱い空気を入れてしまうと、逆に熱中症になってしまう恐れがあります。
集合住宅などで、建物自体が熱を帯びてしまう構造では、窓を開けての換気はあまり有効ではないかもしれません。
猫用アルミベッドやひんやりジェルマットを使用する
ペットショップやホームセンターには、猫用のアルミ製ベッドやひんやりするジェルマットが販売されています。
特にアルミは熱伝導率が高く、放熱しやすいので体温が上がりすぎることを防いでくれます。
デメリットとしては、どちらとも身体に接している面の通気性がよくないところです。身体の熱は取ってくれるものの、快適さを感じないと使ってくれない可能性があります。
直接使わない場合、ジェルマットを冷蔵庫(野菜室など)ですこしだけ冷やして、上記のアルミベッドの下に敷くとほんのりアルミベッドが冷たくなります。
冷えすぎないようにアルミベッドには、薄手のカバーを掛けてあげると、肌触りもよくなるので使ってくれるようになるでしょう。
ペットボトル氷+扇風機で簡易クーラー
2Lペットボトル数本に水を入れて、氷を作っておきましょう。扇風機やサーキュレーターの前面に置くことで、涼しい空気を出すことができます。
猫は体に直風が当たるのは好みませんので、猫が寝ている場所には向けないようにしましょう。周辺に涼しい風がまわることで、少しだけ温度を下げる効果があります。
ペットボトルからは水滴が出てくるので、タオルを巻いておくことをおすすめします。
長毛種は適度なトリミングを
もともと寒冷地原産の長毛種は、できれば夏の間だけでも、トリミングをしてあげるとよいでしょう。
冬には保温効果のある長毛も、夏には体温をこもらせて熱の放出を妨げてしまい、エアコンなしでは耐えきれない子もいます。毛を短くすることで、体温を放出して熱中症を防ぐことができるでしょう。
ただし、バリカンで皮膚まで見えるくらいカットしてしまうのはよくありません。
長毛種の被毛が元のように生えそろうまで5〜6ヶ月かかりますので、その間の気温差で体調を崩したり、違和感からの舐め壊し、直射日光による皮膚炎などのデメリットも少なくないからです。
飲み水はできるだけマメにとりかえる
飲み水は一日数回、できるだけこまめに取り替えるようにしましょう。
夏場は唾液などから菌が繁殖して腐敗しやすいというのと、一日放っておくことでお湯になってしまうからです。特に循環タイプの給水器は、フィルターやポンプの清潔が不可欠です。
猫は基本的に水をガブガブ飲む動物ではありませんし、そもそも夏でなくても「お水を飲まない」とお悩みの飼い主さんも少なくないと思います。そこへきて、暑い場所でのお湯では、ますます飲みたくなくなります。
朝・晩とできれば飲んだあとにも取り替えられたらベター、水飲み場も増やしておければ完璧です!
これらは、住んでいる地域や立地、住環境、あとはそもそも個体差などによっても違ってきますので、決して万能ではありません。
いくつかを組み合わせて試したり、これらをヒントにして新しいアイデアで熱中症対策をしてあげてください。
猫が熱中症になってしまったときの対処方法
万が一、猫が熱中症になってしまった時には、処置が遅くなるほど命の危険もあります。病院へ行く前にも、でおうちできるだけの対処をすることが必要です。
応急処置のポイント
あきらかに体温が上がっているとき(40℃を越えたとき)は、まず早急に身体を冷やす必要があります。
風通しのよい涼しい場所へ移動させ、首や脇などを保冷材や袋に入れた氷で冷やし、体温を下げます。直接皮膚に当てるとその部分はシモヤケになるので、必ずタオルでくるんでから使用してください。
次に身体を冷たい水で濡らしたタオルで包みます。すぐに熱くなるので何枚か用意して、交換しながら体温を吸収しましょう。
同時に、扇風機があればタオルの水分が気化するように風を送ります。うちわや下敷きなどであおぐのもよいでしょう。
熱中症でもうろうとする猫に、無理に水分補給をさせると誤飲の原因になります。スポイトやシリンジで歯茎を濡らす程度にしておきます。自力で起き上がり、飲めるようであれば、ちゅーるやウェットフードを水で溶いてのませるなどしましょう。
ペット用の水分補給ドリンクがない場合、ポカリスエットや経口補水液OS-1(ともに大塚製薬)も使用できます。ただし、ポカリスエットは、塩分糖分ともに人間用に作られているため、あくまでも緊急時に少量与える程度にとどめましょう。
ペット用の経口補水剤で、粉末状のものがあります。常備しておくとよいでしょう。
↓【広告】
病院に行く目安
猫の熱中症は緊急処置が大切ですが、同時に後遺症も怖いのが熱中症です。
口を開けてハァハァ口呼吸をしたり、ふらふらしたり、吐いてしまったら病院へ連れて行く必要があります。
病院の対応にもよりもますが、できれば症状を確認した時点で一旦連絡をして応急処置のアドバイスをもらいながら時間の予約をしておくとよいでしょう。
治療費目安
猫が熱中症で診察を受けた場合の治療費の目安を調べました。
※動物病院は自由診療といい、各病院が自由に料金を設定できるようになっています。
そのため、実際に受診された動物病院にて、医療費がいくら請求されるかはこちらでは保障しかねます。ご了承ください。
初診料 1,000~1,500円程度
点滴をする場合 1,300~2,000円程度
注射をする場合 1,000円~2,000円程度
血液検査 5,500円~
レントゲン検査 3,000円~
あまりにも重症な場合は、入院処置になることも念頭においておきましょう。
思わぬときになるのが熱中症ですが、医療費はそれなりにかかってしまいます。緊急時に備えて、あらかじめキャリーバッグに1~2万円ほど用意しておくと、いざというときもあわてずにすみますよ。
まとめ
暑さに強いといわれる猫でも、条件が重なってしまうと熱中症になってしまいます。むしろ、良く寝ている猫だからこそ、熱中症になっていることに気づけないことの方が良くありません。
基本的には、室温・湿度ともに、飼い主が快適に過ごせる環境であれば、猫にとっても大きなリスクにはなりません。
熱中症は飼い主の管理で防ぐことが十分可能です。猫だけで留守番をさせるときも、熱中症対策は忘れないようにしてあげてくださいね。